Cannonball

2011年10月12日 (水)

Cannonball Revenge(東京→大阪を1日で走る)

タイムは区間移動時間で、休憩は補給ポイントで費やした時間となります。


※準備

 東京駅から出る前にトイレに入って小用及び股ずれ対策(ボルダースポーツ)を行う。改札から出た後自転車を組み立てて日本国道路元標へ。

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 写真撮影後またまたトイレ。結局出発前にトイレに3回ぐらい行く。A9口を降りるとすぐに多機能トイレがある。自転車ごと乗り入れられるので安心して用を足せる。

 日本橋にもっとも近いファミリーマートで補給物資を購入し、マッサージローション塗ったりした後、不要物資を自宅に送る手続きをしてスタート地点へ。なんだかんだと準備に1時間半ほどかかった。
 

※第1区間 99km(日本橋 → セブンイレブン元箱根店)追い風及び横風
 タイム:4時間26分58秒 休憩:5分35秒

 スタート直後は強力な追い風。ドーピング(VESPA)と風の力を借りて40km/h前後で暴走気味にぶっ飛ばす。心拍は180近かったと思う。オーバーペースだとは思ったが、息はそれほど乱れていないので大丈夫だろうと考え、そのままかっ飛ばす。

 横浜駅辺りでbaruさんに捕捉される。どうやら10分遅れで日本橋から出発し、暴走する俺を上回るペースで追いかけてきたようだ。ホントに俺なんで糸魚川でこの人に勝てたんだろ(^^;

baruさん撮影
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当たり前だがまだまだ元気w


 差し入れとして塩タブ2個をいただく。ありがてーありがてー。戸塚踏切回避ルートまで付き合ってくれてそこでお別れ。ここまで2時間ぐらい、ave22km/hだった。

 2時間半を過ぎた辺りだったろうか。オーバーペースがたたって右足の脹脛に違和感が出る。
 (つりかけている……?)
 これから箱根が待っているのにダメじゃね?と思ってボトルに手を伸ばすとなんだかボトルの位置がおかしい。よく見るとボトルゲージが折れていた。これを見た瞬間、俺の心も折れる(´・ω・`)
 箱根越えたところでリタイアしようか真剣に考えた。

 脚が吊りかけていたので、ペースを抑えて走っていたのだが、海岸沿いの快走ルートのおかげでaveは24km/hまで回復している。小田原クランクセブンイレブンに3時間23分で辿り着けたので、達成には十分なペースだった。なんとかガンバってみようと思い直す。

 箱根旧道タイムは46:09.7.前回挑戦時と2秒差だが今回はコンビニでゴミ捨てした時間も含んでこれだから、実際は1分以上早い。

 芦ノ湖セブンでレギュラーサイズボトルを廃棄。自宅によって置いてきてもよかったが、1分でもロスしたくなかった。必要物資を購入後出発。トイレは並んでいたのでこの先の道の駅で済ます事にした。


※第2区間 80km(芦ノ湖セブンイレブン → ローソン静岡黒金町店)横風
 タイム:2時間52分08秒 休憩:6分33秒

 スタート直後、500mくらいサイコンが停止していた。
 大観山への道を目にし、かつてこっちにいってしまったファンキーな挑戦者を思う。

 箱根静岡側国道1号は爽快なダウンヒルコースなのだが、でっかいトラックがかなり長い渋滞を作り出してくれていた。最初事故渋滞かなんかかと思ったよ。ひょいひょいかわしながら下りきり、三島の街を走っていると沿道に後輩がいてびっくり。どうやら待ち構えていてくれたようだ。
 しかしペダルを緩めることなく
 
 「ボトルゲージが壊れた!」
 「なんですとー!」

 のやり取りだけでスルーw わり、急いでんだw
 
 俺の予定だとここは追い風区間だったのだが、あまりスピードが乗っていなかったことを思うと、横風だったのかな。

 由比では漁港に入り、線路下を潜ってすぐ右折して進めば1号横の歩道に出る。この行き方で国道1号の信号待ちを回避できる。あそこケッコー長いんだよ。

由比信号横断回避ルート


 この区間は33~34km/hくらいで巡航していたと思う。想定より遅いスピードに、不安を覚えたが焦っても仕方ない。


※第3区間 86km(ローソン静岡黒金町店 → セブンイレブン浜松篠原町店)追い風
 タイム:3時間16分38秒 休憩:6分18秒

 ローソンでレッドブルチャージをしてそそくさと出発。ここから追い風となる。それまで160以上をマークしていた心拍も漸く落ち着き、150前後となった。大体33km/h前後で巡航する。

 金谷峠を登ったところの交差点で、乗用車がUターンしていて、その後ろからきたミキサー車から怒鳴り声が聞こえる。DQNくせーな。ミキサー車は俺と同じ進行方向へ行き、先行される。せっかくのダウンヒルだが、こりゃ近づかないほうがいいなと思い、離れて下る。

 掛川千羽交差点のサンクスを通過時、去年ここで倒れたんだよなーとか考えていた。タイム的にはここまで9時間で去年のタイムと同じ。機材、戦略が進歩してこの結果だから、俺自身の力は去年に比べて衰えていると感じた。

 袋井では花火大会に遭遇。夏の試走時にもやってたぞ。どんだけ花火してるの。

 この区間はave26km/hほどに達した。風の影響がでかいこの区間が追い風であったことは僥倖だった。
 

※第4区間 77km(セブンイレブン浜松篠原町店 → ローソン刈谷今川町店)追い風後無風
 タイム:3時間09分01秒 休憩:7分07秒

 中間地点である浜名湖弁天島に11時間強で辿り着き、達成の目が見えてきた。
 (しかし愛知から向い風なんだよな……)
 
 潮見坂を越え愛知入り。去年は静岡入りから脱出に8時間。試走時は7時間。今回は6時間40分ほどだったかな?

 あれ、おかしいな……風がない。予報から変わったのか?車が起こす走行風のおかげで実質追い風となる。

 お、去年兄貴が救援に駆けつけてくれたコンビニだ。今回は深夜だからこねーつってたな。でもサプライズでこねーかな?とか思ってたけど、やっぱしこなかった。後で聞いたら、やる前に連絡あるかと思ってたそうで、挑戦中なの知らんかったってw そういや土日のどっちかとしか言ってなかった。

 途中で珍走団に遭遇。名古屋にもまだ生存しているのね。

 スタートから14時間、338km地点。aveは24km/hを上回っている。

 (この戦、もらった……!)

 この時キャノンボール24時間切りを確信した。


※第5区間 79km(ローソン刈谷今川町店 → サークルK国1関宿店)無風
 タイム:3時間29分12秒 休憩:5分53秒

 レッドブルチャージして出発。試走時に直進とゆー大ボケかました松島交差点もちゃんと左折。ちょっと進んで歩行者進入禁止の標識が目に入った。でも軽車両禁止はないよなー?と思って顔を上げると軽車両進入禁止。ならべとかんかーい!ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!

 (だー、たまに話題に上がっていた進入禁止のとこってここか!?回避ルートしらねー)

 別の場所のことだと勘違いしていて、そこも東京側から行く分には進入禁止じゃないと思ってたからなんも調べてない。アドリブで回避したけど、最短回避ルートより1kmも無駄に走ってしまった。

アドリブ版

多分これが一番最短?


 ちなみに次の挑戦者の参考になるよう、区間距離から迷走分の距離は除いております。

 熱田神宮を過ぎたあたりで寒さに耐えられずウインドブレーカーを着込む。

 蟹江町の辺りでハンドルライトにスイッチ入れた。ボツボツ連続点灯しても電池持つだろうと思ったのだが……
 (……つかない!?)
 今はいいけど鈴鹿峠をヘッドランプ一個で下るのか。真剣にゾッとした。

 くっっっそ長い尾張大橋を渡って三重入り。橋上途中で釣りしているおっさんがおり、釣竿が道を塞いでいて邪魔だった。

 亀山バイパス前でライト点かないかなーと思ってなんとなくスイッチを押すと点灯した。よかったー。でも明かり弱くね?ないよりはマシだけどさ……。

 どうやらGENTOS閃のSG-325とSG-329は接触不良が起こりやすい?

 関宿辺りでショーグンさん来てくれるかなーとか思ってたけど、どうやら出先らしい。残念。


※第6区間 67km(サークルK国1関宿店 → ローソン山科音羽店)無風後追い風
 タイム:2時間53分32秒 休憩:6分15秒

 最後の難関、鈴鹿峠。深夜の鈴鹿峠は獣が元気らしい。やつらが起こす物音にビビりまくり。ビビりすぎてただの植え込みが獣に見えたりする(なぜか白熊w)。
 
 しかし今にして思えば真夜中の南アルプス山中でカモシカと対峙したり突然凄まじい獣臭に取り巻かれたことを思えばそこまでビビることもなかったなーとか思ったり。

 鈴鹿峠頂上付近の気温は12度。下りは寒いだろうなーとか思いながらトンネルを抜けると一気に寒くなる。おいおい、なんだこれとか思って道端の気温計に目を向けると9度の表示。トンネル抜けただけで3度も変わるとかどゆこと。下りきるまでの辛抱と思い、できる限りペダルを回して下る。ま、下りきっても寒かったんだけどね!

 関からずっと信号で止まらない。大分先で信号が赤になっても、辿り着く頃には青に変わる。柔軟できねー。ハムストリングスがもげそうなんですけどー。むしろもげろ。


※第7区間 49km(ローソン山科音羽店 → 梅田新道)追い風
 タイム:2時間15分18秒

 関からほとんど水を飲んでいなかったので、ここではジェルのみ購入し出発。京都市街回避ルートを取るつもりで、山科区東野交差点を探す。が、気づかずスルー。

 (山科西野?西って東より西だよね?)

 頭の悪い思考だよね。試走時初めて来た時一発でわかったのになんでやねん。路地を適当に抜けて市街回避ルートに復帰。5~10分くらいロスったんじゃなかろーか。

 AM7:22、大阪入り。枚方市の看板をみて
 「ウオオオォォォッッッ!!!」
 と雄叫びを上げた。去年は泣いた。

 23時間まで残り40分くらい。なんとか23時間を切れないものか……まだ寒かったけど、空気抵抗になっていたウインドブレーカーを脱ぎ、超エアロポジションを取って全力漕ぎに入る。

 心拍は157くらいか。40km/h前後で大阪市街をぶっ飛ばす。どーでもいーけどママチャリの動きがフリーダム過ぎて怖いんですけど。

 結局23時間を31秒オーバー。頑張ったけどダメだった。

 走行距離:537.56km
 総計時間:23時間00分31秒(ave23.4km/h)
 走行時間:19時間29分23秒(ave27.6km/h)


※ゴール後

 梅田新道の交差点は赤だったので止まる。前方に見覚えのあるローディー発見。あさぎりちゃんが待っててくれた。へたり込んでしばらく談笑。
 
 一先ず元標行きません?って言われて元標に行くと声をかけられる。

 (あれ、まさか……?)

 と思ったらホントにまさかのショーグンさん。400kmのブルベが大阪であったんだって。なんか全然元気そうですよ?ホントに400km走ってきたのー(^^;

 あさぎりちゃんが
 「これ差し入れです」
 とくれた物はお約束のカレーバー……じゃなくてピザバー!?うそーん。

 ショーグンさんからもアロエヨーグルトの差し入れ。どっちもウマー。ホントに有難かった。

ヘンタイ三人衆の自転車(左からショーグンさん、あさぎりちゃん、俺の並び)
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 夜はあさぎりちゃんを誘って串かつ屋でキャノンボール裏話など。翌日はせっかく関西まで来たので暗峠見物。日本最狂坂の名はダテじゃねー。今回12-23Tだったんだけど、このギア比じゃサラ脚でも登れねーよw

 カーボンリムだから下山も歩いて下る羽目になたw

 下山後は京都まで走って行ってファンキーな人に会い、ラーメン食った。ウマウマ。 京都駅まで送ってもらってお別れ。

 なんだかんだで挑戦翌日も70km近く走った。疲れた。

2010年11月 2日 (火)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 エピローグ

 ゴールしたら「歩道で大の字になって寝っ転がってやる!」とずっと思っていたので、歩道に上がる。と、なにやらこちらに注意を向けている人物がいた。
(まさか……?)
「キャノンボールの人ですか?」
 やっぱしゴール出迎えの人だった。この嬉しさは言葉には尽くせない物がある。が、一先ず大の字にならせてもらう(笑)。
「だー、もー走りたくねー!」
とか叫んだ気がする。
 兄貴とキャノボ板へ無事到着したことを報告した後、俺らはしばし談笑。道路元標前で写真を撮りたかったので場所を聞いてみたけど知らないみたいだ。地元の人はそーいうの気にしないもんだよね。探す気力もなかったので取りあえずその場で写真を撮ってもらった。

 0:00過ぎには宿へと到着。宿の人がとてもいい人で、
「いい自転車ですよね。ホントはダメですけど見なかったことにしますので部屋へ上げていいですよ」
と言ってくれた。疲れ果てた中輪行バッグにつめる作業を行なわないですんで、本当に助かった。
 板へもう一度応援に対する感謝の書き込みを行なった後、風呂へと入る。汗と共に疲れやら何やらいろいろな物が出てくる感じだった。
 胃腸が芳しくはなかったが、コーラが飲みたい衝動を我慢できず、宿の自販機で購入。恐る恐る飲むと大丈夫だった。「うますぎ!」と咆哮(笑)。
 1:30には眠ったと思う。翌朝は7:00前には目が覚めた。胃腸の状態は小康状態。ご飯は食べられそうだ。俺は外に出て喫茶店を探す。宿の近くでチェーン店の喫茶店を発見したので、そこで朝食。ジャーマンサンドだかなんだかと紅茶を注文してまったりボケーッとしながら食べた。

 朝食後外を散歩。見上げると秋晴れの空。やたらとキレイで、いつもと違って見えた。

 喫茶店の朝食が少し物足りなかったのでパン屋でパンを一個購入。食べた後、宿へと戻る。チェックアウトギリギリまでだらだら過ごし、宿を出た。昨日見つけられなかった道路元標を探しにいくとあっさり見つかる。自転車をその前に置いて写真に収めた。
 その後「たこ八」というチェーン店でたこ焼きとねぎ焼きを食べた。
 でっかい橋を渡って新大阪駅へ。駅で串かつ食べて、お土産&駅弁買って新幹線に乗り込む。ビール片手に焼肉弁当食べた。真昼間から飲むビールのうまさは格別ですな~(^^)。しかし食ってばっかりだな(笑)。食べ終わった後、板へ今回のレポートを書き込む。新幹線乗車中ほとんどの時間を費やした(笑)。


 TJ○R出場やめた時、もう運動自体やめよーかなーと思ってた。でも今年は何も挑戦してないし、やめるなら何かやってからやめようと思ってキャノンボールを計画した。自転車真面目にやるのは2年ぶりで、挑戦までの期間は3ヶ月。久々にヒルクライムやロングライドをすると背筋がやたらと痛かった。猛暑の中、練習がてら名古屋まで走ったときは死ぬかと思った。でも楽しかった。

 終った直後はキャノンボール24時間へ挑戦したい気持ちと2度とやりたくない気持ちが等分だった。今は達成者に名を連ねたい欲望がむくむくと湧いてきて、挑戦したい気持ちが勝っている。暇とやる気があったら国内最長国道4号線走破とかにも挑戦してみたい。
 しかしこの挑戦で受けた胃へのダメージはいまだ尾を引いている。早く治してまたロングライドに出かけたい!

 大阪で応援と出迎えに来てくれたお二方、そして浜名湖ですれ違ったキャノンボーラーとは何かの縁で再会できたらなと思う。


 自転車はおもしろい!!

-おわり-

2010年11月 1日 (月)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ⑩大阪

 まだ大阪の端っこに着いただけなのに涙とはなんたる不覚。でも仕方ないかな。ゴールできるかも危ういまま走り続け、ようやく大阪まで辿り着いたのだから。
 俺は小さく苦笑してから気合を入れなおした。ハンガーノックがいつ襲い掛かってくるかわからない。まだまだ最後まで油断はできないのだ。

 枚方入ってしばらくして、坂を登っていると一台のロードレーサーがいた。かっこいいなーと思いながら通り過ぎる。そのままたらたら走っていると横から声をかけられた。さっきのロードレーサーだ。

「キャノンボールの人ですか?」
「はい。え、まさか応援に来てくれたんですか!?」
「はい!」

 驚いた。24時間制限に負けた俺に現地応援が来るとは正直予想外だった。彼もかつてキャノンボールに挑んだことがあると言っていた。その時ゴールで応援者が待っていたことがとても嬉しかったので、今回俺の応援にきてくれたとのこと。しばらく談笑しながら走る。

「この先に小さな丘みたいな坂があるけど、それさえ越えればもう大きな登りはないよ!」

 彼はそこの頂上まで付き合ってくれた。「あとちょっと、がんばれ!」の声を背後に聞き、俺は「有難うございました!」と返しながら別れる。もう一つ最後に何か言っていたのだが、聞き取れなかったのが残念だ。

 ここでテンションの上がった俺はスピードも上がる!が、すぐにハンガーノックの兆候を感じ取り、あわててスピードを元に戻して飴玉を口に入れた。「自重しろ~」と苦笑しながらつぶやく。しかし苦笑してばかりだな。

 大阪に入って青看板の距離表示とサイコンの距離表示は、青看板の方が減りが早い。
(大阪は俺にデレた!)
 ペガサス幻想が頭に流れたり、めでたい脳みそは相変わらずだ。

 初心者の頃より遅いスピードでとことこ走り続けて残り10km。26時間まで残り35分
(このまま行けば26時間切りは可能そうだ……)
 しかしそうは甘くない。ゴールが近くなるにつれて、信号ストップが多くなる。残り6km、18分。俺はペースを上げたい衝動に駆られるが我慢する。
(ここでペースを上げてハンガーノックになったら一歩も動けなくなる。ギリギリまで維持。最後の3分で勝負をかける)
 そう決めて、刻々と過ぎ行く時間に耐え忍ぶ。

 赤信号で止まった。メーター上はゴールまで1km。実際の誤差は不明。俺は下ハンを握り締め、ダウンポジションを取り待ち構える。残り時間は3分12秒。信号が青になる。それと同時に残った力をかき集め猛然と加速。30秒でハンガーノックの兆候を感じ取るが無視。信号が赤になりストップ。が、すぐ青になり再加速。梅新東の交差点を過ぎた。
(次のはずだ……!)
 顔を上げると梅田新道の看板が見えた。


 この挑戦ではいろんな景色を見たり、出会いがあったり、ちょっと絶望してみたり、感動したり。
(まるで小さな旅だったな)
 大阪に入ってからそんな風に思っていた。本当に楽しかった。


 俺は走行データを確認する。

 走行距離:543.88km
 平均速度:20.9km/h(グロス)
      26.4km/h(ネット)
 開始日時:10/10(日)21:26:00
 到着日時:10/11(月)23:25:08
 所要時間:25:59:08


 26時間弱の短くて、長かった旅が終った。

2010年10月29日 (金)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ⑨不屈 京都

(こりゃもう無理だな……)
 周りに憚る事無く「オエェェェェ」と声を出しながらそう思う。強烈な吐き気と共に胃袋から戻ってくるモノは何もない。そもそも胃の中に戻すようなモノは入ってない。随分前からジェルすらまともに取れていないし、水とて大量に飲んでいたわけではないから。

 吐き気がおさまると俺はクリートをペダルに装着し、目の前の登り坂に向かってクランクを回す。
(距離は55km。補給はできない。さて、どこまで行けるかな)

 別に俺は敢闘精神を持ち合わせているわけじゃない。根性があるわけでもない。ほとんど悪ノリでこんなことし始めただけだ。それでも続行したのは、つまらない意地とキャノボ板住人の応援、そして浜名湖での遭遇・エール交換があったからだろう。
 俺は名も無き応援者たちが背中を押してくれる光景を妄想しながら
「ここでやめられるような奴なら始めっからこんなことしてねーよっ、と」
ブツクサ呟き苦笑いを浮かべて坂を登る。

 トンネルをくぐると下り坂。重力に身を任せて下ると見覚えのある道。
(東山三十六峰マウンテンマラソンで通ったなぁ)
 去年の思い出を振り返った。

 下りきって東山五条交差点で左折して一時一号離脱。平坦路を10~20km/hでしばらく走る。糖質エネルギー消費を極力抑えて、しばらく胃を休ませた。そうして走ったのは体感では20~30分だと思っていたが、多分10~15分くらいだったのだろう。そうでないと進んだ距離の辻褄が合わない。
 俺は恐る恐る飴玉を口にした。胃が破綻しないよう、時折歯に挟んで溶かすのを止めたりしながらゆっくりゆっくり舐めた。水は、舌を湿らす程度口に含んで飲む。……神の味がした。胃の負担を最小限にしながら補給を再開する。巡航速度は25km/hまで上げた。道なりに進んで一号に戻る。

 時刻21:26、506km地点。24時間で進めた距離。

 周りにある旨そうな飯屋の看板を見ながら
「ゴールしてもまともなもん食えねー俺になんの嫌がらせだ!」
と一人突っ込む。

 残り少なくなった水補給の為自販機で止まる。板を確認するとエール交換したキャノンボーラーが23時間ちょいで日本橋ゴールを果たしていた。祝辞を書き込んでから出発。時刻は21:50、残り30km。
(アベ20km/hで1時間半。今日中ゴールは可能っぽい。何事も無ければ26時間は切れるかな?)
 特に意味はないが、なんとなく26時間切りしたいなーと思うようになる。

 体力、脚はまだまだイケる。胃はじんわりと焼けるような感覚。耐えられない様な激しい痛みではないが何か嫌な感じ。
(なんつーか長生きできる性格じゃねーよなー。生命線も短いしっ)
とか、そんな事を考えていた。


 正確な時間、距離は覚えていない。22時頃だったろうか。

 大阪府枚方市

 府境表示が目に入った。それと同時に万感の思いが去来する。


 俺の目には涙が溢れ出ていた。

2010年10月28日 (木)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ⑧天国と地獄と 滋賀→京都入り

 滋賀からは再び夜間走行となる。風は無風か追い風だったか。そこそこスピードが乗っていたのだけは記憶している。

 ウィダーを口にすると、吐き気がこみ上げてきた。ついにジェルもダメになる。
(いまだ100km以上あるのに飴だけで持つのか……)
……考えても仕方がない。

 コンビニで小休止。休みついでに飲みかけで残っていたわずかばかりのウィダーを飲むとゲップが出る。胃痛も少しだが増した。以降、ジェル系を口にすることはなかった。5分ほど横になって休んでから出発。

 大津まではやたらと長かったように思う。京都との境には気づかずいつのまにか京都入りしていたようだ。時刻は20:20頃。青看板はついに大阪方面を示す表示が出てきた。
(残り70km。アベ20km/hでギリギリか。何事も無ければやれそうだけれど今日中は難しいかもしれんなぁ)
 胃痛は相変わらずで、飴だけで走り続けられるかは分からない。それでもゴールまでは辿り着いてやる、そう決意して走っていると大阪までの距離表示がある青看板をみつける。

 ↑大阪 55km

 ……!?

 俺の予想より15kmも短かった。
(これなら今日中も可能かもしれない……!)
 どんなにつらい状況でも、諦めずに闘い続けていると、たまにこういう事がある。俺は天から救いを受けたような、そんな思いを抱いた。

 5分後、停止。

 飴を舐めていると、喉の奥に何かが詰まっているような感じがする。まるで口にモノが入っているのを拒否するかのようだ。胃の痛みも増している。嫌な感じだな……そう思いながら水を口にすると嘔吐感がこみ上げてきた。
(飴も水もダメになるのかよ……)
 俺は一先ず歩道に自転車を止め、その脇で横になった。三重-滋賀県境で、「ゴールしてから書き込む」と投稿したが、走れるかも分からない状況だったので、現況を書き込んでおいた。

 ここでリタイアするべきか悩む。

 体調不良でよくやったよ。
 京都まで来ただけでも大したもんだ。
 次やれば24h切りもいけるんじゃないの?

 周りはそんな風に言ってくれるだろうし、自分でもそう思う。が、どれほど自分をごまかす言葉を並べても今回の挑戦が「失敗」であり「敗北」であることは変らない。

 ……まだ動ける。

 20:45、俺は再び愛機に跨ってペダルを踏む。その5秒後、内臓ごと吐き出すような激しい嘔吐感に襲われた。

2010年10月26日 (火)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ⑦三重 - ラストボス・鈴鹿峠

 この辺りから記憶が曖昧になっている。いろいろやってきたがこれほどの長時間動いた経験はない。

 三重でも向い風。しかし辛い苦しいという感情は全て胃の方にいっているのでどーでもよくなってきていた。
 桑名辺りは渋滞していてすり抜けるのに神経を使った。桑名市街を走っていると、見覚えのある自転車屋を発見。
(昔友達とここにきたなぁ……)
 今は不仲になってしまった友人を、一抹の寂しさと共に思い出す。

 道は平坦からアップダウンが続くようになってきた。時刻は16:00前。青看板を見ると亀山まで15kmの表示。確かこの時点で415kmほどだったと思う。コンビニをみつけたので吸い寄せられるように入っていった。
 腸の状態もあまりよくない。トイレを借りておこもりしたけど出るのはガスばかり。
 小休止後出発。亀山バイパスへと入った。
(ここ通っていいのかなぁ……?)
 いささか不安ではあったものの、軽車両進入禁止の看板は見当たらない。それに入ってすぐ、対向車線を走る自転車(旅人)を発見したので、まー大丈夫だろうと思った。

 鈴鹿峠を目前に控えた関宿のコンビニで飴「男梅」を購入。その前に購入した黒糖飴は走りながら舐めるにはいまいち。食料系の補充はここが最後となった。

 夕暮れ時に鈴鹿峠に入った。俺はヘッドランプ及び後部LEDを点灯する。
 緩やかな登りが続く。
(ここさえ越えればあとは大きな登りはないはず)
それだけを希望に気力を振り絞って登った。

 正直に言えば鈴鹿峠はヒルクライムとしては大したことはない。が、20時間近く走ってきた俺にとっては超級の峠だ。

 頂上に向かうにつれ、勾配はきつくなる。薄暗くなってきた空、先の分からない峠道、身体異常……。心を蝕む要素はいくつもあった。
(それでもここを登り切れば……!)

 ふと、目の前にトンネルが見えた。トンネルを抜けて見えたモノは「滋賀県」の看板と豪快な下り坂。時刻17:41、鈴鹿峠頂上制覇。心の中はただただ凪いでいる。

 キャノボ板を閲覧した。応援、心配、アドバイスなどを読みながら思考する。
(残り125km程。今日中ゴールまで6時間強……)
 俺は疲労から震えの止まらない指で板へ投稿。

「滋賀入り。鈴鹿峠登りきった……

 時間が厳しい。無心でこぐ。ゴールしたら書く。
 アドバイス感謝! 」

 ヘルメットに取り付けていたライトも点灯し、薄暮の鈴鹿峠を下った。

2010年10月25日 (月)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ⑥愛知はデレない。

 愛知は交通事故死ワーストNo.1の県だ。不名誉な称号継続の一端を担いたくはない。行程の半分を越えた所でもあるし、気を引き締めなおす。
 俺は長距離に挑む時は、半分からがスタート地点だと言い聞かせる。実際、精神的キツさは半分もきてないのだから間違っていないと思う。しかし12時間以上走ってきてようやくスタート地点と思い込むのはなかなか難しい(笑)

 愛知からは強い向い風となった。愛知を走るのは3度目だが、毎回強い向い風だ。
(まったく、愛知はいつも俺にツンだな。まったくデレることがない。デレのないツンなんていらねーよ)
と、たわけたことを考えつつ一人苦笑しながら走る。

 胃の調子は相変わらずで、身体的にも精神的にも厳しくなっていく。豊橋市街をぬけ、豊川へ入る頃にはスピードは20~25km/hまで落ち込み、大失速していた。コンビニに入り、小休止を取る。この時点で24h切りの可能性は断たれた。潮見坂の時のテンションの高さは見る影もない。しかしリタイアしようとは思わなかった。

 岡崎市街前に続く地味な登り坂は私的には本行程中3番目の地獄だと思う。しかも向い風のおまけつきだ。それでも折れる事無く闘い続ける。豊川の休憩時、板の応援から幾ばくか力をもらった。24h切りが不可能になったからといって無様に投げ出す気はない。元より俺の目標は完走すること。走り続ける力はまだ残っている。
 岡崎市街に辿り着く頃、腸にも異変が出る。だがこれは想定の範囲内。俺は歩道に上がって少し休みながら持っていた下痢止めを服用した。

 刈谷では愛知住まいの兄貴が応援に駆けつけてくれた。アミノバイタルのジェルと胃腸薬を受取った。
「もう名古屋でやめたら?」
「おー。しれっと名古屋駅行って、ゴールしたぜ!とか初級板に書き込むかw」
「そうしろよ」
「そうだなー」
などと話したりした。もちろん冗談で言ったのだが、5%くらいはそうしたい気持ちがあったかもしれない。
 動けなくなった時の救援を頼み、出発する。

 この時兄貴が持ってきてくれた胃腸薬とアミノバイタルが効果覿面で、ここから先一時間は序盤のスピードを取り戻す。しかし痛みが引いただけで、エネルギー補給がままならないのは変らない。徐々にスピードは落ちていき、巡航速度は30km/h程となった。

 13:47、熱田神宮南交差点通過。東京⇒名古屋キャノンボールなら17時間かからないくらいだろうか。

 14:41、愛知最後のコンビニで止まる。胃腸は再び悪くなっていた。ここでソルマックを購入し飲んでみたが効果はみられず。
「なんとか今日中ゴール目指す。」
そう板へ書き込む。

 14:54、愛知と三重、県境を分かつ木曽川を越える。

2010年10月23日 (土)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ⑤東海の巨人 静岡(後編)

 ここからは胃への負担を最小限にしなければならない。俺は少量をできるだけ小分けにして補給する策に出る。まず、飴を舐める頻度を上げた。ほぼ常に口に入れている状態だ。また、ウィダーを少量、20~30分置きで摂取した。

 スピードは30km/h前後。痛みは完全には引かないものの、どうにか耐えられる状態を維持して走り続けた。袋井、磐田を越えて浜松入りを果たす。
(キャノンボーラーと遭遇するならこの辺りか……。)
そんな思考が頭によぎり、浜松の道を眺めてやはり会えないだろうと思った。

 浜松のコンビニで補給を行い、板を閲覧。10分ほど前に大阪発キャノンボーラーが豊橋到着と書いてあった。
(おや?これなら会えるかも……?)
浜松の街中をぬけてからなら道も狭まる。気づく可能性はあるかもしれない。取りあえず対向車線に注意して走ろう。そう思いながら現況を書き込み、出発した。

 走り出してから半日が過ぎようとしていた。距離は270kmを越え、浜名湖は目前だった。ここまで何度かロードレーサーとはすれ違ったが、キャノンボーラーらしき人は見かけなかった。既にどこかですれ違っているかもしれない……そんな風にも考えたが、注意して走ることはやめない。

 弁天島に差し掛かるところで前方から赤いジャージのロードレーサーが迫ってくる。
(まさか……!)
なかば確信のようなモノを感じた俺は大声で

「キャノンボーラーですか!?」

と叫んだ。そうすると相手から

「はい!」

と返ってきた。俺はブレーキをかけながら相手の自転車を見た。そこにはGHISALLOのロゴ。
(違うか……。)
俺は、彼はスペシャの自転車に乗っていると思っていたので、そのまま通り過ぎようとした。だが、
(まてまて、今確かに「はい」って言った!)
と、いつもあまり当てにならない耳なのだが、この時ばかりは聞き間違いではないと信じた。振り返るとジャージにスペシャのロゴがある。俺は急ブレーキし、もう一度確認を取った。そうするとやはり彼はキャノンボーラーだった。
 あとあと彼の書き込みを読み返してみると、ジャージはスペシャだが自転車もスペシャとは書いてなかった(笑)。
 しかしまさかホントに遭遇できるとは。同じ日にキャノンボールをスタートしたのも、出会える場所ですれ違えたことも……さまざまな偶然が重ならなければ起こりえない。マジで奇跡だ。
 お互いタイムと闘っており、急ぐ身であったから会話は1分そこそこの短いものだった。

「がんばりましょう!!!」
「気をつけて!!!」

とエールを交換し、それぞれのゴールを目指して走り出す。


 この出会いがなければ、俺は最後まで走りぬくことはできなかっただろう


 浜名湖を越え、潮見坂手前のコンビニで補給を行う。板へ我々が遭遇した事を書き込み後、静岡最後の登りへとペダルを踏み込む。先ほどの出会いで俺のテンションはMAXだ。少々の登りなどなんでもない。既に300km近く徹夜で走ってきたし、胃は相変わらず痛い。それでも俺は笑いながら登った。楽しくて仕方がなかった。

 潮見坂を越え、坂を下ってしばらくすると「愛知県豊橋市」の看板を見つける。県境越えの時刻は9:45。8時間の長きに渡る静岡での闘いが終った。

2010年10月22日 (金)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ④東海の巨人 静岡(中編)

 宇津ノ谷のトンネルを抜け、藤枝市に入る頃空が白み始めた。夜明けの空はやけに心を打つものがある。
 俺の身体も少しずつ目覚め始めていた。早朝の澄んだ空気の中自転車で走るのは気持ちがいい。藤枝の街中をかっ飛ばして一気に島田へと突入した。
 大津通り交差点で一時一号より離脱。県道381を通って掛川を目指す。目の前には金谷の登りが立ちはだかる。箱根以来のヒルクライムだ。
(ここを登るのも3度目だな……。)
 勾配はそれほどでもない。島田の街並を眺めながら気楽に登る。途中、早朝ランニングを楽しむおじさんを見かけ、朝の挨拶を交わす。

「おはようございます~」
「おはよう~。自転車で坂を登るのは大変だよなー」
(ふっ、実はランニングで坂を登る方が大変なんですよ?)
そう思ったがそんなことは言わず、
「そーですね~」
「がんばってなー」
「有難うございます~。お互いがんばりましょー」
 
 旅の醍醐味は見知らぬ人との会話だよな~。

 八坂で再び一号に戻った。体力、足共に元気ではあったが、胃には違和感があった。
(大丈夫かな~)
そうは言っても補給しないとハンガーノックが怖い。
(ま、ジェルだし大丈夫だろう)
そう楽観的に考え、ウィダーを飲む。


 ここから苦闘が始まる。


(痛い……)
 俺は胃に焼けるような痛みを感じていた。一気に大失速する。まがりなりにも走ることはできているが、とてもこの状態で最後まで走りきれるとは思えない。悩んだ末俺は大休止を取る事にする。
 時刻は6:30。ここは225km地点、掛川は千羽のコンビニ。俺は買い物してから外にいた店員に事情を話し、駐車場脇で横になった。現況を板へ書き込み、これからどうするか思案する。
(距離は残り335kmほどか……。この状態で持つのか……?まぁ、多めに見積もっているから短くなる可能性も、、、いやいや、延びる可能性もある。自分に甘い希望は捨てとけ。)
 希望となる要素は今の所ない。こんな時間じゃ薬局も開いてないし、胃痛を改善させる見込みはない。頭にはリタイヤがちらつく。書き込んでから15分、板を確認してみた。

「足三里のツボを押すと良いよ。」

 そんな書き込みがあった。ツボの場所と押し方の詳細が記されている。俺は藁にもすがる思いでツボを押す。
 押し始めてから10分。胃の痛みは随分と和らいだ。
(ツボ、効いたかな……。)
 俺は名も無き応援者に感謝した。40分ほどのロス。24hペースにギリギリ入ってはいたが、これからどれほど失速するかはわからない。
(どうなるかはわからん。取りあえずやれるところまでやってみよう。)

 7:08、再始動。

2010年10月20日 (水)

Cannonball!【TOKYO⇒OSAKA】 ③東海の巨人 静岡(前編)

 これから先の長い下りで身体を冷やさない為に、俺は雨具を着込んだ。目の前には静岡との境を示す看板がある。1:46、その境界を越えて静岡入りした。

 箱根峠は15km続く。コーナーも程よいRで、とても気持ちがいい。登りの苦労を吹っ飛ばすかのように景色が後方へ流れていった。
 楽しい時間は過ぎ行くのが早い。あっという間に下界へと降りてしまった。ここは静岡東部の街、三島。昨日の夜、俺はこの街から新幹線に乗って東京へ旅立ったのだ。
(このまま家に帰って眠りたいな)
 本気ではないもののそんな思考が頭に過ぎり、かすかに苦笑した。

 箱根のてっぺんでパンを食べたのだが、少々空腹を感じたので予備食のカーボショッツを飲んだ。ここからしばらくは平坦。だがキャノボの中でもっとも距離が長い県、静岡。都道府県別面積13位とそこそこの大きさではあるが、問題はその横の長さ。Google Mapのルート検索で179kmある。キャノボ中3割強は静岡が占めるのだ。その長さゆえ、いつまでも静岡が終らない感覚に襲われ心が蝕まれてしまう。俺はこれから闘う静岡に対し、巨人が横たわって俺の邪魔をしている幻想を抱いてしまった。

 ……というのは嘘だ。タイトルにかけただけ(笑)。

 長さの他にも静岡は厄介な点を抱えている。軽車両進入禁止のバイパスが多く、単純に一号を進む事ができない。だがこの点については地元の利を活かして三島から名古屋まで2度横断し、道を完璧に把握していた。

 余談だが俺は今回の挑戦において地図を持たず、迷った時は携帯Google Mapで確認しようと思っていた。しかし最後まで迷う事無く、一度も地図を確認する事はなかった。

 一号を八幡交差点で左に折れ、旧一号に入る。深夜の沼津市街を抜け、海岸沿いの通りへと出たところでコンビニへと入った。眠い。俺は眠眠打破と缶コーヒーと補給食及び水を購入した。眠眠打破とコーヒーを飲みながら板を確認。書き込みに力をもらい、ボトルに水を移し変えてそそくさと出発。
 海岸沿いは微風の向い風。この程度なら問題ない。天候は今の所俺の味方をしてくれている。巡航速度は32~34km/hに落ちたが、心拍は150強。開始から5時間を過ぎてようやく落ち着いたようだ。

 さて、最初の厄介事、富士川越えだ。俺の行き方はおそらく一般の攻略法と異なる。攻略サイトを確認するとこのままr380を進みR139、R1と交差して、r396へと向かう(r=県道 R=国道)。俺はr380から檜交差点でr170に入り吉原駅南側を抜け、旭化成富士支社前の交差点に突き当たる。しかしよく見ると非常に細い道があり、直進できるのだ。ここを抜けるとR1富士由比バイパスに出る。そしてそのまま「道の駅富士」まで行き、歩道に入る。新富士川橋は歩道で渡り、あとは富士由比バイパスと並走しているローカルな道(少々入組んでいる)を突き進む。蒲原駅南側を通ってしばらくすると右折させられ、r396と合流する。
 通常攻略の道より2~3kmお得だった気がする。このクレイジーな挑戦を考えていて、この道を知りたい者がいたら時間が合えば案内しよう。ここのコメント欄にでも書き込んでくれ。ただし依頼を受けるのは3人くらいまでかな。それ以上はわからない。

 そうやって由比を抜け、一号と合流した。快調に飛ばしながら
(もしかしたら24h切りできるかもしれないな)
そう思った。元々完走目的だったので、これは嬉しい誤算だった。

 ……まぁ、甘い考えだったのだが。

 清水を抜け、東静岡でガンダムを横手に眺めながら突き進む。もうすぐ静岡駅だ。俺は持っていたどら焼きを口にした。……呑み込めない。開始7時間で俺の胃は固形物を拒否するようになってしまった。24hで行けたとしてもあと17時間もあるのに、最後まで持つのだろうか……猛烈な不安に襲われた。しかし悩んでばかりもいられない。俺はどら焼きを無理矢理水で流し込んだ。
 静岡駅を過ぎてすぐのコンビニに止まる。ここからは胃に負担の少ない補給食にするしかない。俺はウィダーと飴を購入した。ここで板に現況を書き込んだ。時刻は4:36。ひたすら眠い身体に鞭打ち、暗闇の中を疾走していく。